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kangekinocafe

Author:kangekinocafe
観劇の記録と紹介です。

えびす組劇場見聞録メンバーです。
しばらくblogはお休みしていましたが、【演劇、観劇のカフェ】blogからこちらに引っ越して来ました。
どうぞよろしく。

観劇のカフェ
出会った作品について語ります。関連書籍や音楽も、できる限りご紹介します。
『ピグマリオン』(11/13-12/1)
201311ピグマリオン映画『マイ・フェア・レディ』の元になる戯曲です。
映画は驚くほど戯曲に忠実だったことを実感しました。ただしラストシーンを除いては。
そして女性の描かれ方の、なんと繊細なことでしょう。
イライザの成長が軸となっているのは周知のこと。
実は男たちがイライザに翻弄されている、そんな彼らの様が喜劇でもあります。

男性陣に対して、使用人のミセス・ピアス(増子倭文江)をはじめとして、ヒギンズの母・ミセス・ヒギンズ(倉野章子)、そしてイライザ(石原さとみ)の現実的なこと。
冒頭ではそれらの現実的な物言いが鬱陶しく感じられることもありましたが、イライザがレディとしての振る舞いを身に付けていくにつれ、彼女たちの意志の強さに魅了されるようになりました。
なぜイライザは、ヘンリー・ヒギンズ(平岳大)の罵倒に耐えて、貴婦人の言葉遣いを身に付けることができたのでしょうか。
幼くして自立しなければならなかった彼女は、女だからと身を売ることもせず、真っ当に花を売ることで生計をたてることを自負し、毅然とした志を持って生きてきました。彼女なりに。
そんな彼女に芽生えた向上心。
ヘンリー・ヒギンズの、高級なデパートの売り子として働ける言葉遣いを自分なら教えられる、という言葉を頼りにやって来たイライザ。
(相場は別として)ちゃんと月謝を払うつもりの、なんとも気高い彼女なのです。
思い出すだけでも目頭が熱くなってきました。

イライザをどういう待遇で屋敷に置くのか、きっちり確認するミセス・ピアス。
そして、イライザの貴婦人ぶりに賭けに勝った喜びようのヘンリー・ヒギンズとピカリング大佐(綱島郷太郎)。
そんな彼らにピシャリとイライザの将来について問い、浮かれる行為をたしなめるミセス・ヒギンズ。
さらにミセス・ヒギンズの素晴らしいところは、今や大金持ちとなったイライザの父親(小堺一機)の結婚式に参列しようとするところ。
彼女が参列することにより、イライザの父親の世間での立ち位置が立証されるという思慮深い想いやりと貴婦人としての責務を果たす姿。

若い石原さとみが演じるイライザを、周囲の女性陣が温かい眼差しで支えている、そんな作品に見えました。

いち早くイライザに恋をしたフレディ(橋本 淳)ですが、残念ながら母親(春風ひとみ)と妹と比べると頼り無く感じられます。

「辛辣」と称されるバーナード・ショー、イライザと周囲の人々のあるべき姿が描かれています。
ヘンリー・ヒギンズたちを叱責するミセス・ヒギンズの言葉にハッとしたことでしょう。

作・ジョージ・バーナード・ショー、翻訳・小田島恒志、演出・宮田慶子
美術・松井るみ、照明・沢田祐二、音楽・かみむら周平、音響・高橋 巖、衣裳・半田悦子、
ヘアメイク・川端富生、振付・青木美保、演出助手・高野 玲、舞台監督・澁谷壽久

※詳細は新国立劇場の公式サイトで。

(新国立劇場 中劇場にて)

☆『ピグマリオン』翻訳は今回上演と同じ小田島 恒志。
【「後日譚」(登場人物たちのその後を描いたもの)も完全収録した決定訳!(光文社の書籍紹介より)】
ピグマリオン (光文社古典新訳文庫)ピグマリオン (光文社古典新訳文庫)
(2013/11/08)
George Bernard Shaw、 他



☆ミュージカル映画『マイ・フェア・レディ』DVD
マイ・フェア・レディ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]マイ・フェア・レディ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
(2013/08/23)
オードリー・ヘプバーン、レックス・ハリソン 他



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てがみ座『地を渡る舟』(11/20-24)
てがみ座地を渡る舟演劇ユニットてがみ座、第9回公演。
脚本の長田育恵。
彼女の作品を今年に入ってから観たのは、
◆ミュージカル「by the sea~波のかなたへウラの歌~」(脚本・作詞)
 劇団:演劇ユニット てがみ座×イッツフォーリーズ、演出:坂口阿紀
◆「凪の樹海」(脚本)
 演出:藤原新平(文学座)
その他にも
◆「祝女 シーズン3」(NHK)などの仕事をされていることから、実に多彩で多才な人物だとお見受けしました。

そして彼女が主宰するてがみ座公演は、今回が初見です。

さて、てがみ座の『地を渡る舟』(公式サイトはこちら)、主人公は実在した旅する民俗学者の宮本常一。
日本列島を隈なく歩いた学者としての彼の信念は、戦前、戦中、戦後を通して職務以上に人々に影響を与えました。
この作品では、実業家・銀行家として知られた渋沢敬三が東京の自宅の物置小屋に作った「アチックミューゼアム」が舞台となっています。
そこに集う志のある研究者たち、そしてそこには渋沢のもう一つの顔がありました。
渋沢が瀬戸内で教師をする宮本を招聘したことから、宮本の人生ばかりでなくそこに集う彼らの意志が大きく動き出しました。
戦争に翻弄されながらも、尊い志の下、ミューゼアムは守られていきます。
そして迎えた終戦の時。
日銀の副総裁にまでなった渋沢にとって、ミューゼアムは彼の生きる道そのものであることを痛感しました。

渋沢敬三(青山 勝)の想いを足で実践してきた宮本常一(古河耕史)。
彼らの志を「文字による方舟」になぞらえ、その陰にあるそれぞれの妻たちの大きな決心と想い。
脚本の長田育恵は、そこのところもしっかりと描いています。
彼女たちの守るべき家と子ども。
そんな大きな犠牲を払ってでも遂げる志であること、アチックミューゼアムに並ぶ資料の一つ一つが語るものについて考えずにはいられませんでした。

さて、この作品中、真っ直ぐに生きる宮本常一を演じる古河耕史。
役の内面を観客に伝える力のある俳優です。

演出・扇田 拓也、脚本・長田 育恵
舞台美術・杉山 至+鴉屋、音響・笠木健司、照明・シバタユキエ・木藤 歩、衣裳・阿部 美千代

渋沢敬三没後50年企画展 8/25-11/24(案内が劇場の折込チラシに入っています)
渋沢敬三記念事業「屋根裏部屋の博物館」9/19-12/3(案内が劇場の折込チラシに入っています)

(東京芸術劇場 シアターウエストにて)


花道会 歌舞伎セミナー(11/17)
花道会57回イヤホンガイドの解説でお馴染みの、塚田圭一氏が代表を務める花道会
花道会の会員でなくても参加できるのが魅力です。

歌舞伎俳優から裏方さんまで、ベテラン、大御所から若手まで、歌舞伎に関わる人々のお話しを、歌舞伎ツウでなくてもわかりやすく話を聞き出す「歌舞伎セミナー」。
イヤホンガイドの立体版、というところでしょうか。

・・・という前置きは、花道会のご紹介として毎度掲載させていただくことにして、
3月に、花道会開催50回記念のゲストとして坂東三津五郎丈(参加時の様子はこちら
5月に、中村壱太郎
今年は既に2回参加しました。
毎回楽しみなのは、歌舞伎に関わる方々の文字通り素顔の話が聴けることです。
中でも一貫しているのは、多くの方に歌舞伎を気軽に観て欲しいと語る言葉。

2011年11月の中村亀鶴丈の回でより具体的に語られていたのは、
「歌舞伎や邦楽に馴れ親しむためには小さい頃から歌舞伎を見せてあげて欲しい。
マナーは行っているうちに覚えるから」と。
そして歌舞伎小屋のシネコンシステム構想の話は魅力的でした。
歌舞伎座に小劇場もあればいいですね。
東銀座の歌舞伎座に行けば、様々な趣向の舞台を何か必ずやっているとか、低価格で観られるとか。
自らが大きくなってから歌舞伎の世界に身を投じたからこその役者の心がけにも共感しました。

そして、今回の坂東亀三郎丈。
今年37才の彼も、世間に向かって歌舞伎を観て欲しいと呼びかけています。
twitterを駆使し、歌舞伎役者としての、時には野球を愛する青年としてのつぶやきだとか、
歌舞伎ファンに向けて写真入りの筋書き発売情報だとか、
情報満載で読み応えがあって臨場感のあるつぶやきです。
亀三郎さんのtwitterアカウントは @otowayabando

セミナーの冒頭では緊張されていた感がありましたが、参加者の質問で次第に打ち解けた様子にこちらも笑みがこぼれました。

「劇場へは一人で来ないでください」との呼びかけも。
グループで来て観た芝居について、あーだこーだ意見交換して欲しいのだそうです。

その亀三郎丈、過去に現代劇の舞台にも出演されています。
私が観たのは、作・清水邦夫、演出・蜷川幸雄『我が魂は命の水なり』(2008年5月の観劇録はこちら)
私が亀三郎さんを知って注目し始めたのは、この六郎役です。
稽古が始まってから体重が12、3キロ減るほどの大変な舞台だったそうで、「(演出の蜷川さんから)灰皿が飛んできたら捕るつもりでいました」という野球好きならではのコメントも飛び出しました。
そして、作・スタンダール、演出・赤澤ムック『赤と黒』(2009年10月の観劇録はこちら

今後、また現代劇に出演したいですか?の問いに、「出たいです」と。
歌舞伎も含めてセリフの多い役どころへの意欲があるようで、現代劇も大きな劇場で、と。
実現させていただきたいものです。

ところで「花道会」で質問できなかったフォロワーのために、セミナー後にはtwitter上で時間限定で質問を受け付けたりと、その心意気と配慮は嬉しいですね。
双方向で、まず役者に興味を持って、劇場へ。も、楽しいことでしょう。

11月の吉例顔見世大歌舞伎通し狂言 仮手本忠臣蔵」四段目にも出演されていますが、引き続き12月の十二月大歌舞伎」では四段目と七段目に出演とのこと。
11月と12月は同じ演目を配役違いで上演するという、なかなか興味深い趣向です。
※公演の詳細は歌舞伎公式サイトで。
※チケットの購入は【チケットWeb松竹】で。

☆歌舞伎座さよなら公演第6巻(DVD)
 歌舞伎座さよなら公演で上演された吉例顔見世大歌舞伎(平成21年11月公演)
通し狂言 仮名手本忠臣蔵」を収録
歌舞伎座さよなら公演 吉例顔見世大歌舞伎/十二月大歌舞伎 (歌舞伎座DVD BOOK)歌舞伎座さよなら公演 吉例顔見世大歌舞伎/十二月大歌舞伎 (歌舞伎座DVD BOOK)
(2011/04/01)
河竹登志夫、安孫子正 他




1000文字エッセイ「演出家 デヴィッド・ルヴォー来日!スペシャルトーク」
20131113geigekitalk東京芸術劇場主催で行われた【演出家 デヴィッド・ルヴォー来日!スペシャルトーク】に参加しました。通訳は薛珠麗さん。

私自身は1994年に初めて彼の作品と出会い、以来機会があれば海外(パリ、ロンドン、チチェスター)でも演出作品を観るほど、その世界の虜となっています。
虚構の中に浮かび上がる真実。まるで彼の視線から目を逸らすことのできない自分自身のように、作品に惹かれるのです。
今後も日本での出会いを楽しみにしつつ、観客として関わってきた想いを1000文字エッセイ(1000文字程度で書いたもの)として綴ります。

1000文字エッセイ「演出家 デヴィッド・ルヴォー来日!スペシャルトーク
-「生きる」舞台も客席も-

 こんなにも手の内を優しく語る(さらけ出す)演出家がいるだろうかと思う程に、過去へと遡って彼の演出スタイルを紐解くような濃いトークでした。
 かつて隅田川左岸にあったベニサン・ピットという劇場。小劇場ブーム(野田秀樹を中心とした「夢の遊眠社」など)の終息と時を同じくして、1993年春にTPT(シアタープロジェクト東京)はベニサン・ピットを本拠地として立ち上がりました。イギリス人の演出家デヴィッド・ルヴォーがTPT芸術監督に就任したのは、ちょうど野田秀樹がイギリスに留学した頃だったそうです。聴き手を務めた長谷部浩氏の話で知りました。
 今にして思えば奇跡のような瞬間、TPT設立当初は年に数本、デヴィッド・ルヴォーはこのベニサン・ピットで立て続けに演出作品を発表していたのです。(詳細はTPTのサイトを参照
 劇場自体は1985年にオープンしていたようですが、私が観客としてベニサン・ピットを訪れたのはTPT設立2年目の1994年。世間の評判を聞いたというわけでも無く、単に芝居をそこでやっているからという理由で足を運びました。
 170席ほどの客席、閉塞感のある劇場空間。そこで最初に観たのは、ジャン・コクトーの『双頭の鷲』。人間の本能、愛の営みが感情として包み隠さずに描かれていることに、そして薄暗い舞台で時折見えた感情の燃え上がる炎、憎しみさえも美しいと感じたことに衝撃を受けました。
 今回のトークでも話題に上ったリアリズム、それを観客の目線で語ると、彼の描く作品には「嘘が無い」ということです。観客は言わば目撃者ではないかとさえ感じて、高揚感を覚えたものでした。
 結果的に登場人物の感情に突き動かされて、私自身に化学反応のような気持ちの変化がもたらされました。それは作品に寄り添えた(わかるという)満足感でもあったように思います。以来、ベニサン・ピット(=TPT)に行けば何かが自分に起きるという期待を持ち、楽しみにしていたことが思い出されます。
 昨年、彼の演出したミュージカル『ルドルフ・ザ・ラストキス』で、「生きる」ことにつきまとう感情の全てが観る者を突き動かすことを体感された方も多いと思います。近いうちに今度はもっと間近でそんな体験ができれば。想いを強く願います。

(東京芸術劇場シンフォニースペースにて)

過去にも1000文字エッセイに、彼の作品について書いています。(1000文字エッセイ「タブーへの挑戦」

☆聴き手の長谷部浩氏がデヴィッド・ルヴォーについて書いた著書
傷ついた性―デヴィッド・ルヴォー 演出の技法傷ついた性―デヴィッド・ルヴォー 演出の技法
(1997/11)
長谷部 浩



テーマ:観劇 - ジャンル:学問・文化・芸術