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kangekinocafe

Author:kangekinocafe
観劇の記録と紹介です。

えびす組劇場見聞録メンバーです。
しばらくblogはお休みしていましたが、【演劇、観劇のカフェ】blogからこちらに引っ越して来ました。
どうぞよろしく。

観劇のカフェ
出会った作品について語ります。関連書籍や音楽も、できる限りご紹介します。
『私のなかの悪魔』(3/25-31)
原作は、「令嬢ジュリー」の作者でも知られるストリンドベリの「債鬼」。
観劇前にと読み始めたのは、森鴎外の翻訳でした。
情景を思い描くには、言葉づかいがちょっと硬くて、とうとう字面を追っただけで観劇当日を迎えてしまいました。

劇場で目にしたのは、愛するという感情において誰にでも潜んでいる悪魔的な部分。

登場人物3人の関係は、妻、前の夫、現在の夫。
前夫(佐土井けん太)は、妻の自分への愛情に確信を持てない現在の夫(高橋洋・・・本来のタカは髙)
の前に身分を偽って現れては、二人の仲を裂こうとするような言動を、さも助言のごとく述べている。

妻は妻で、現在の夫を自分なりの愛し方で愛していると言っては、若い男の気を惹くことにも余念がない。

可愛そうなのは、現在の夫、ということになるのでしょうか。
自分の持てるものは、愛だけでなく才能までも与え、その見返りの無いことに不安と空しさを感じています。

妻をに扮したのは、とよた真帆
大胆に下着姿からドレスを纏う姿を披露して、観客をも魅了します。
あっけらかんとした物言いは、相手が男性でなくても、魅力的。
容姿も、そして発言する内容も、女性にとっては羨望の的。

前の夫は、与えた愛に対する見返りを取り立てに来たという、ここで原作の「債鬼」らしさが見えますが、
翻案の笹部博司と翻案・演出の真山真治は、男と女の本音の出し合いで、両者一歩も譲らない展開で魅せていました。

この最後まで交わることのない、彼らの愛情のすれ違いが喜劇的に描かれています。
むしろコメディにしてしまった、という方がぴったりかもしれません。

そして、原作を超え、ラスト、数十年後を予想させる妻の姿。
年上の前夫とも、生気を吸い取られたような現在の夫とも、おそらく死別したと思われるその後。
老婆となり、車いすの上で介護士の腕に怪しく触れるその姿に、女性たちはグサリと心臓を刺されたような衝撃を受けたことでしょう。
その後、私たち女性が「債鬼」となるであろうことを・・・。

※『私のなかの悪魔』公式サイトはこちら

☆「債鬼」訳・森鴎外を収録。
鴎外全集〈第5巻〉/小説・戯曲〈5〉鴎外全集〈第5巻〉/小説・戯曲〈5〉
(1972/03)
森 鴎外


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テーマ:観劇 - ジャンル:学問・文化・芸術

新国立バレエ『DANCE to the Future2013』(3/26-27)
DANCEtotheFuture2013新国立金森穣中村恩恵
ポスターに名前のあるお二人が振付を担当し、新国立劇場バレエ団のダンサーが踊りました。

新国立劇場バレエ団を知るにつれ、またファンになるにつれて、彼らが現代舞踊を披露するこの企画が楽しみでなりません。
こちらはバレエ団の公式ブログ)

この企画に最初に魅せられたのが『DANCE to the Future2012』。

その前年の2011年3月に『ダイナミック ダンス!』が行われる予定でしたが、震災のため中止に。
その後2年を経て今年の1月に同作品は上演されました。(公演案内はこちら
現代舞踊のジャンルとは異なるかもしれませんが、バレエダンサーがジャズ音楽で踊る、この切り口の斬新さに感銘を受けました。

普段はオペラパレスでクラシックバレエを踊るダンサー達。
のびやかで、しなやかに音楽を全身で表現する別の一面を見ると、ドキドキします。
女性はより艶やかに、男性はしなやかに、より逞しく見えました。

この現代舞踊で本領発揮、な注目ダンサーもいます。
DANCE to the Future2012』の平山素子振付の「Butterfly」において、その表現力で観客を圧倒した宝満直也

今回も追加演目となった中村恩恵振付「O Lolitude」で、ソロを踊りました。
中劇場の舞台を一人で踊る姿に、次第に観客は惹きつけられて、幕が下りると拍手喝采。
誰が踊るとも知らずに見ていましたが、後で宝満さんだとわかりました。

自ら進んで現代舞踊を観に行くことはありませんが、新国立ダンサーを通して身体で表現することで伝え、伝わる意味を考えさせられました。
「踊り」に魅せられたのです。

(新国立劇場 中劇場にて)

☆ストーリー性があって楽しめる、新国立劇場バレエ団による『アラジン』DVD。
アラジン (バレエ名作物語vol.5)アラジン (バレエ名作物語vol.5)
(2011/10/21)
デヴィッド・ビントレー



テーマ:ダンス - ジャンル:学問・文化・芸術

秘演『授業』無名塾(2/2-3/23)
無名塾授業2010年に、この仲代劇堂で観た『友達』。
若手が多く参加したこの作品も秘演でした。
(その時の仲代劇堂の様子はこちら

今回は、仲代達矢自らが主演する公演です。
イヨネスコの『授業』。
老教授には仲代が、女生徒には15期生の山本雅子、メイドには9期生の西山知佐が扮して、この不条理劇と言われる作品を、不条理たる所以の作品を、客席から手の届きそうな空間で魅せてくれました。

劇場となるこの場所は、普段は稽古場として使われています。
隅に二階部分からのラセン階段が設えてあるのですが、そこも舞台の一つとして。
授業が行われる部屋へと老教授が書籍を抱えて降りてきました。
稽古場という、塾生が教えを乞い、自らを成長させる空間での上演。
ここから観客は、幾度となく既成概念を裏切られ、老教授の狂気について自らに問いかける旅に出ることになるのです。

この日は千秋楽。
終演後に、仲代自ら不条理劇を上演するに至った挨拶がありました。
この作品から、観客それぞれが何かを感じて欲しいのだと締めくくって。
観客へと、その解釈が委ねられた、ニュートラルな上演でした。

無名塾の塾生は、女性は皆、世間離れした美しさを身に纏っています。
特筆すべきは、その見目麗しい女生徒と老教授の授業。
メイドが忠告に部屋に立ち入る行為も、ここでは痴情を抑制するものだと思っていました。
観るにつけ、もっと深い教授と生徒のギブアンドテイクの接点が見えてきます。
これまで教授が築いてきた知識とその上に成り立つプライド。
教授は、知識に飢えて、親の期待に応え、自らを高めたいと欲する女生徒へ、手を差し伸べたはず、でした。

言葉と行為が示す展開、その接点がずれて平行線をたどることの恐怖。

なんだか今の世の中と似ているような感覚に囚われてしまいました。

仲代劇堂1ところで客席は、このように個性的で重厚な趣のある椅子で作られています。
1951年に書かれた『授業』。
半世紀以上も前のフランスの戯曲の雰囲気そのままに存在するかのような舞台。
この密室とも言える空間が、私たち観客を異次元の世界へと誘いました。
これからも、この仲代劇堂で「秘演」と称して公演が行われていくことでしょう。
汗と涙と努力と喜びと知性を感じるこの空間での芝居を、いつか味わってみてください。

仲代劇堂2「稽古場を覆うレンガは外国の古いお城に使われていた物を利用しています。」(無名塾のサイトより)

観劇を終えると、いつも私はこう思います。
「この場所に居合わせることができて、よかった」と。

作・ウージェーヌ・イヨネスコ、翻訳・丹野郁弓、演出・林 清人、音楽・池辺晋一郎、装置・島 次郎、照明・遠藤正義、効果・山岸和郎、衣裳・竹林正人、殺陣・森岡隆見、舞台監督・山本弘人

(仲代劇堂にて)

授業・犀 (ベスト・オブ・イヨネスコ)
(1993/12)
ウージェーヌ イヨネスコ



テーマ:観劇 - ジャンル:学問・文化・芸術

コンサートマスターの饗宴(3/21)
銀座にあるヤマハホールで聴いた「コンサートマスターの饗宴」。
コンサートマスターと言えば、管弦楽団の首席第1バイオリン奏者。
オーケストラの中で一人だけ指揮者と握手している光景を見たことがあるでしょう。
あの奏者が、コンサートマスターです。
そんなオーケストラの要とも言える奏者4人の共演、競演、饗宴♪

そのプログラムも一筋縄ではいかない面白さがありました。

  J.S.バッハ/2つのバイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV 1043
  B.バルトーク/44の二重奏曲より
  S.プロコフィエフ/2つのバイオリンのためのソナタ ハ長調 Op.56
  A.ヴィヴァルディ/3つのバイオリンのための協奏曲 ヘ長調 RV 551
  P.d.サラサーテ/ナバーラ Op.33
  L.マウラー/4つのバイオリンのための協奏交響曲 イ短調 Op.55

私のように、音楽を学校で専門に学んだことの無い観客からしても、特にプロコフィエフ作曲の「2つのバイオリンのためのソナタ」など小品をいくつも並べたソナタは、面白みのある選曲だと思いました。

ピアノを交えて4人が揃っての演奏では、息の合わせ方ひとつにしても、作品を完成させる目的に向かってそれぞれが役割以上に高みを目指すプロフェッショナルな姿を見られたような気がします。

出演者について、公式サイトから紹介します。
   矢部達哉(バイオリン/東京都交響楽団ソロ・コンサートマスター)
   四方恭子(バイオリン/東京都交響楽団ソロ・コンサートマスター)
   江口有香(バイオリン/日本フィルハーモニー交響楽団コンサートミストレス)
   伊藤亮太郎(バイオリン/札幌交響楽団コンサートマスター)
   諸田由里子(ピアノ)

余談となりますが、2000年秋にサントリーホールで、朝比奈隆指揮のブラームスチクルスを聴きました。
バイオリンのソロは、矢部達哉。

1908年生まれの指揮者に1968年生まれのソロ奏者。
ちょうど60年の差がありますが、朝比奈氏の指揮のもと、的確に伸び伸びと奏でる矢部氏、そして奏者に敬意を払う指揮者の眼差しに感動したことを覚えています。

矢部さんのソロを聴いたのは、その時以来。
そんなことを思い出しながら、このコンサートを楽しみました。

(ヤマハホールにて)

☆矢部達哉さんのソロアルバム。
ツィゴイネルワイゼンツィゴイネルワイゼン
(2000/01/21)
矢部達哉

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☆四方恭子さんの「イザイ:無伴奏VNソナタ」
イザイ:無伴奏VNソナタイザイ:無伴奏VNソナタ
(1992/05/25)
四方恭子

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☆ヴァイオリンの江口有香さん姉弟の「VNとチェロのための二重奏曲集」
VNとチェロのための二重奏曲集VNとチェロのための二重奏曲集
(2000/08/23)
江口有香

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☆伊藤亮太郎さん参加の「アンダンテ・カンタービレ~世界を舞台に!ストリング・クワルテット ARCOデビュー」 
アンダンテ・カンタービレ~世界を舞台に!ストリング・クワルテット ARCOデビュー~アンダンテ・カンタービレ~世界を舞台に!ストリング・クワルテット ARCOデビュー~
(2000/09/21)
ストリング・クワルテット ARCO

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『さくら色 オカンの嫁入り』(3/15-20)
さくら色 オカンの嫁入り』を、三越劇場で観ました。

映画を観て展開は知っていましたが、この客席で感じたことは、目の前で語られる言葉で感じる思いやりでした。

オカンと捨て男・研二の出会い、抱える過去。
引きこもった月子の、そして見守るサク婆の想い。
月子を姉ちゃんと慕う飼い犬のハチ。

それぞれの口から、互いへの想いが語られる時、染み渡る人情にホロリとしました。

一寸先は闇、と言っていいほど、将来の見通しを描くことが困難な現代。
なんでも最近「涙活(るいかつ)」が流行りとか。
ネットで検索すると「悲しい時や感動した時などに、相手の境遇に共感して流す涙にストレス発散効果があるという」
この目的のために、参加者を募って一緒に泣く活動があるとか。

一幕では、引きこもって一年になる月子の現状への想いを知って、知らず知らず涙が頬を伝っていました。

そして、21才で月子を身ごもっている間に夫に先立たれ、両親も既に他界していたオカンを住まわせた大家であるサク婆の見守る想い。
その家が、サク婆の産まれてこなかった子供のために建てたものであることなど、彼らの心でつながっている状況を安堵の想いで聴きました。
派手な研二のシャツにさえ、込められた意味があります。

オカンも月子も研二も、今も生きることを頑張っています。
彼らなりに。
いえ、人一倍。
その姿が、舞台ですから彼らの口から語られる、その言葉が観客の心に触れました。

きっと心から共感していたのだと思います。
何も考えずに涙がポロポロと落ちてきました。

ところで、昨年12月に上演された『ハーベスト』(詳細は世田谷パブリックシアターのサイト)に続いて、熱い男を演じる佐藤アツヒロさんがいいですね。
その瞳に説得力がありました。優しさと情熱の。

4月は演劇鑑賞会で、引き続き上演されるそうです。
会員の皆さん、お楽しみに。

原作・咲乃月音「さくら色 オカンの嫁入り」(宝島社文庫)
脚本・赤澤ムック、演出・西川信廣、音楽・八幡茂、美術・中村広一、照明・吉川ひろ子、音響・高橋巌、衣装・村上由美

(三越劇場にて)

さくら色 オカンの嫁入り (宝島社文庫)さくら色 オカンの嫁入り (宝島社文庫)
(2009/09/05)
咲乃 月音



☆続編があるとは知りませんでした。
ゆうやけ色 オカンの嫁入り・その後 (宝島社文庫)ゆうやけ色 オカンの嫁入り・その後 (宝島社文庫)
(2010/09/07)
咲乃 月音



花道会 歌舞伎セミナー(3/12)
イヤホンガイドの解説でお馴染みの、塚田圭一氏が代表を務める花道会
花道会の会員でなくても参加できるのが魅力です。

歌舞伎俳優から裏方さんまで、ベテラン、大御所から若手まで、歌舞伎に関わる人々のお話しを、歌舞伎ツウでなくてもわかりやすく話を聞き出す「歌舞伎セミナー」。
イヤホンガイドの立体版、というところでしょうか。
かつて市川團十郎丈のお話も、この会で聴かせていただきました。

開催されてから、今月で50回を迎えられたそうです。
その記念すべきゲストは、坂東三津五郎丈。

来月に新開場する歌舞伎座の第一部では、十八世中村勘三郎に捧ぐとして、『お祭り(おまつり)』に登場します。
小二の時から一緒に舞台に出ていたという中村勘三郎丈への想いをはじめとし、今回のテーマである【これからの歌舞伎 これからの、役者】の枠を超えて、大いに語り、楽しませてくれました。

三津五郎丈には、歌舞伎の舞台で男のロマンと色気が感じられます。
その「色気」について一言。
出そうと思って作ると安っぽくなってしまうから、そうやって作るものではないのだと。
結局は、その人の持つものから・・・というようなお話をされていました。

そう言われると、様々な舞台で出会う色気を感じる俳優のことが気になってしまいます。
これも見方の一つとして、楽しみが増えました。

主催のイヤホンガイドから、新開場の歌舞伎座での利用料金の改定(650円→700円)の案内と、
新たに導入される、字幕の機種の説明がありました。
新しい歌舞伎座では、前の座席に磁石で取り付けられるそうです。

歌舞伎に親しみを覚えられたのは、このイヤホンガイドがきっかけでした。
せっかくですから、作品を隅々まで楽しみたいものです。

坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ
(2008/07/25)
坂東 三津五郎

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☆舞踊も魅力的な坂東三津五郎丈。
坂東三津五郎 踊りの愉しみ坂東三津五郎 踊りの愉しみ
(2010/09/15)
坂東 三津五郎

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テーマ:観劇 - ジャンル:学問・文化・芸術

『長い墓標の列』(3/7-24)
長い墓標の列第二次世界大戦前の東京大学経済学部教授、河合栄治郎氏をモデルとした作品。
作・福田善之。

なんという緊迫感のある芝居だったのでしょう。
観客の全てがこの時期に、咳もくしゃみもなかったという3時間を過ごしました。

思想がまるで権力争いの道具と化し、どちら側につくかが運命まで左右してしまう。
専門用語が飛び交う中、観客は登場人物の信念を頼りに行方を見守っていました。

自らの思想を貫き、大学を追われる山名教授(村田雄浩)。
一番信頼する弟子の城崎(古河耕史)。
卒業後もゼミに顔を出しては、山名の身を案ずる新聞記者の千葉(北川響)。

1930年後半から戦時中までの、日本に渦巻く思想の嵐に、彼らも巻き込まれていきます。
自分の力では、どうにも太刀打ちできない時代。
思想でさえ出口の見えない暗黒の時代に突入。

そんな時代背景ですが、個々の考え方に着目すると、彼らの守るべきものが見えてくる、ような気がします。
自分の中にも共感できる部分が、きっとある。
彼らの言葉の中に出てくる「信念」。
「信念」を持って生きた時代の人々の、潔さ、清さ、したたかさ、に、今の自分の姿を映してみたくなりました。

男たちの思想を巡る戦いの傍らでは、家庭を守る妻、愛に目覚め始めた娘など、支え、守る女性の姿が作品を身近なものにしています。

戦争が奪うもの。
「墓標」が「長い列」になるタイトルが示すその意味を。

ところでこの作品、新国立劇場 演劇研修所の修了生が多数出演する企画です。
しかしそれを前面に出さず、ベテランが牽引する群像劇として作品の持つ緊迫感を持続しています。
プログラムを見て、修了生一人一人の名前と芝居を記憶に刻みました。

新国立劇場のサイトでは、こちらの修了生情報で、修了生の活動を知ることができます。

ゼミの若い学生たちだけでなく、作品の中枢に位置する弟子の城崎演じる古河耕史さんも、千葉を演じる北川響さんも修了生。
彼らはともに、40倍という入所希望者の中から研修所に入所し、一期生として卒業しました。
実際に、これまで新国立劇場以外で活躍する彼らの舞台も観てきました。

劇団とは異なる次元の演劇を学んだ彼らは、自立した俳優として世に出ているわけです。

それが演劇研修所の役割なのでしょうか。
まだ研修生公演というものを観たことがありません。
彼らの目指すもの、その過程にも目を向けたくなりました。

(公演の舞台写真はこちら

作・福田善之、演出・宮田慶子、美術・伊藤雅子、照明・鈴木武人、音響・上田好生、衣裳・半田悦子

(新国立劇場 小劇場にて)

※公演詳細は新国立劇場のサイトで。

☆『長い墓標の列』をはじめ、戦争を題材にした4戯曲を収録。
「戦争と平和」戯曲全集 (第8巻)「戦争と平和」戯曲全集 (第8巻)
(1998/10)
藤木 宏幸



テーマ:観劇 - ジャンル:学問・文化・芸術

『独裁者の息子』(3/7-8)
独裁者の息子2013劇団綺畸(キキ)、2012年度新人公演『独裁者の息子』作演 岡本卓郎。

初めて観劇した学生演劇。
プロの劇団のような演技指導を受けた演じ手ではないから、というわけでも無いのですが、自然と作と演出に関心が向きました。

舞台は、教室。
自らの考えが正当だ、と言わんばかりの女性教師。
生徒たちの意見は次々と却下され、無視されている、という冒頭。

これが物語の暗示であるなんて。

先生も生徒も、そして二重構造で始まる物語の敵も味方も、同じ役者が目の前で素早く転換。
教室の場面では、生徒が背を向け、顔が見えない。
これらの演出が結構気に入りました。

発想が一筋縄じゃない、けど追いたいこともわかる。

二重構造の世界を行ったり来たり。

歌い、踊り、客席を駆け抜け…華美なところもありましたが、新人公演としてやりたいことを伸び伸びとやったかなと。

次回作も気になります。

(劇場小空間・・・東京大学 駒場キャンパス内 多目的ホールにて)

劇団綺畸の公式サイトはこちら
 東京大学、東京女子大学のインカレ学生劇団。
 如月小春が東京女子大学在学中に創立。だそうです。


テーマ:観劇 - ジャンル:学問・文化・芸術

気になる(男優編)その2
先日、気になる俳優について一人目に高橋洋さん(本来のタカは髙)をご紹介しました。
柔らかな優しさの漂う文章から、ご本人のブログを読むのが楽しみです。

もう一人、文章にも魅力を感じる気になる俳優をご紹介します。
新国立劇場 演劇研修所第一期修了生の古河耕史さん。
彼の文章は、とても詩的です。
短く並ぶ単語に込められた意味を考えると、時に切なくなりますが、そこはかとない情熱も感じられて、何度も読み返してしまいます。

こちらは古河さんのブログ。
走りながら、話ながら、考えて、みる。 古河耕史の、自分宣伝とか、俳優日誌とか。

古河耕史さんについては、えびす組劇場見聞録第41号の【俳優について】というテーマで語らせていただきました。

初めて彼の演技を見たのは、2005年の文学座附属演劇研究所一年目の本科卒業発表会で。
その後は新国立劇場 演劇研修所に入所されたので、次に舞台の上の彼に出会ったのは、三年後の新国立劇場『オットーと呼ばれる日本人』(観劇録はこちら)でした。

それからは舞台を観るごとに、作品での存在が大きくなっています。

次回出演作は、新国立劇場『長い墓標の列』。
(公演詳細は新国立劇場のサイトで。普段見ることのできない顔合わせの映像もあります。)

「ベテラン俳優達とともに修了生と、硬質な作品を制作するシリーズ」企画公演の筆頭に立って、その動向が注目される城崎に配役されています。

新国立劇場のサイトでは、こちらの修了生情報で、修了生の活動を知ることができます。

古河さんの発信する数々の言葉とともに、そこから生み出される芝居にも注目していただけたらと思います。

※『長い墓標の列』は、2013年3月7日~24日、新国立劇場 小劇場にて。

☆『長い墓標の列』をはじめ、戦争を題材にした4戯曲を収録。
「戦争と平和」戯曲全集 (第8巻)「戦争と平和」戯曲全集 (第8巻)
(1998/10)
藤木 宏幸

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虚構の劇団ゲスト出演舞台DVD。
虚構の劇団『監視カメラが忘れたアリア』【DVD】虚構の劇団『監視カメラが忘れたアリア』【DVD】
(2010/04/23)
古河耕史、大久保綾乃 他

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虚構の劇団『エゴ・サーチ』[DVD]虚構の劇団『エゴ・サーチ』[DVD]
(2010/12/20)
古河耕史、渡辺芳博 他

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虚構の劇団 『アンダー・ザ・ロウズ』 [DVD]虚構の劇団 『アンダー・ザ・ロウズ』 [DVD]
(2011/09/01)
大久保綾乃、大杉さほり 他

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文学座『セールスマンの死』(2/22-3/5)
多くの演劇愛好家の方は耳にしたことがあるタイトルでしょう。
果たして若い観客の、どれだけの方が、この作品をご覧になったことがあるのでしょうか?
と、いうのも、かつて上演されていたという話を聞いたことがあっても、近年は上演されていなかったように思うからです。

文学座では初、だそうで、新たに酒井洋子さんの翻訳で上演されています。

主人公のセールスマン、ウィリー・ローマン
誰々が演じた『セールスマンの死』というように、ウィリーを演じてきた俳優の話は聞こえてきても、他の登場人物の名が聞こえてこなかったのは何故でしょうか?
そう疑問を持つほどに、文学座公演では家族、友人、雇い主、そして憧れの兄など、ウィリーに関わる全ての人物の生きざまが見えていました。

この物語が始まってから、私たちは既に混乱の渦中にいるウィリー(たかお鷹)を目にします。
混乱の原因は?
それを紐解くのが物語の鍵であるかのように、ウィリーの追憶をたどっていきます。

息子にかける期待、栄光を信じていた昔。

現実の息子たちへの怒りと不満。

その溝が、周囲の人々の証言で徐々に埋まっていきます。
そんなスリリングな展開。
悲しいかな、ウィリーは父として、息子に怒りを覚えても、失望を認めることはできないのではないかと。
全てを傍らで見つめてきた妻のリンダ(富沢亜古)だけが、ウィリーの楽しみと悲しみの最愛の理解者でした。
彼女の発する一言一言に愛を感じ、胸が熱くなりました。

友人のビルにしても、然り。

残念なことに、どうしても彼らの想いが報われません。

それを阻むかのような息子たちの空回りする想い。

ウィリーに解雇を言い渡す雇い主のハワード(星智也)にしても、何もウィリーが憎いわけでもなく、彼が抱える会社と現在のウィリーの状況を案じては仕方のないこと。

翻訳の酒井さんがおっしゃるには、「この作品には誰一人として無駄な人物はいない」。
全ての人物との関わりが、ウィリーを窮地に追い込むとともに、現実世界で見守る人物となり得るのです。

これは、実際の私たちの社会生活においても同じではないでしょうか。
傍から見ると同じように見えるのだろうなと、1949年に初上演されたこの作品の本質が、現在でも変わらないことを痛感しています。

帰宅して、家族に『セールスマンの死』を観てきたと告げました。
すると映画を観た者は、「保険金のために自殺しようとするんだよね」と言いました。

私には、単にそう言い切ることはできません。
過去にしてきたことにずっと罪悪感を持ち、それを償う術を探しているように見えたウィリー。
打ちのめされるように共感できる部分もあることがショックでもあり、それを糧にこれからを見据えようと思ってみたり。
混沌と混乱の真っただ中に自分がいることにハッとさせられました。

音楽の、音響効果の持つ不思議な力を劇場で味わってみて欲しいです。

作・アーサー・ミラー、役・酒井洋子、演出・西川信廣、
美術・朝倉 摂、照明・服部 基、音楽・上田 亨、音響効果・中嶋直勝、衣裳・前田文子

(あうるすぽっとにて)

☆酒井洋子さんの翻訳ではありませんが、既存の翻訳本をご紹介します。
アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)
(2006/09/20)
アーサー・ミラー

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☆映画DVD
セールスマンの死 [DVD]セールスマンの死 [DVD]
(2009/10/26)
フレドリック・マーチ、ミルドレッド・ダンノック 他

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☆ウィリー・ローマン役を滝沢修さんが演じた舞台プログラム。
舞台プログラム セールスマンの死(1966) 作:アーサー・ミラー 訳・演出:菅原卓 出演:滝沢修、小夜福子 ほか舞台プログラム セールスマンの死(1966) 作:アーサー・ミラー 訳・演出:菅原卓 出演:滝沢修、小夜福子 ほか
()
不明

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舞台プログラム セールスマンの死(1984公演) 作:アーサー・ミラー 演出:滝沢修 出演:奈良岡明子 ほか舞台プログラム セールスマンの死(1984公演) 作:アーサー・ミラー 演出:滝沢修 出演:奈良岡明子 ほか
()
不明

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