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kangekinocafe

Author:kangekinocafe
観劇の記録と紹介です。

えびす組劇場見聞録メンバーです。
しばらくblogはお休みしていましたが、【演劇、観劇のカフェ】blogからこちらに引っ越して来ました。
どうぞよろしく。

観劇のカフェ
出会った作品について語ります。関連書籍や音楽も、できる限りご紹介します。
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1000文字エッセイ「演出家 デヴィッド・ルヴォー来日!スペシャルトーク」
20131113geigekitalk東京芸術劇場主催で行われた【演出家 デヴィッド・ルヴォー来日!スペシャルトーク】に参加しました。通訳は薛珠麗さん。

私自身は1994年に初めて彼の作品と出会い、以来機会があれば海外(パリ、ロンドン、チチェスター)でも演出作品を観るほど、その世界の虜となっています。
虚構の中に浮かび上がる真実。まるで彼の視線から目を逸らすことのできない自分自身のように、作品に惹かれるのです。
今後も日本での出会いを楽しみにしつつ、観客として関わってきた想いを1000文字エッセイ(1000文字程度で書いたもの)として綴ります。

1000文字エッセイ「演出家 デヴィッド・ルヴォー来日!スペシャルトーク
-「生きる」舞台も客席も-

 こんなにも手の内を優しく語る(さらけ出す)演出家がいるだろうかと思う程に、過去へと遡って彼の演出スタイルを紐解くような濃いトークでした。
 かつて隅田川左岸にあったベニサン・ピットという劇場。小劇場ブーム(野田秀樹を中心とした「夢の遊眠社」など)の終息と時を同じくして、1993年春にTPT(シアタープロジェクト東京)はベニサン・ピットを本拠地として立ち上がりました。イギリス人の演出家デヴィッド・ルヴォーがTPT芸術監督に就任したのは、ちょうど野田秀樹がイギリスに留学した頃だったそうです。聴き手を務めた長谷部浩氏の話で知りました。
 今にして思えば奇跡のような瞬間、TPT設立当初は年に数本、デヴィッド・ルヴォーはこのベニサン・ピットで立て続けに演出作品を発表していたのです。(詳細はTPTのサイトを参照
 劇場自体は1985年にオープンしていたようですが、私が観客としてベニサン・ピットを訪れたのはTPT設立2年目の1994年。世間の評判を聞いたというわけでも無く、単に芝居をそこでやっているからという理由で足を運びました。
 170席ほどの客席、閉塞感のある劇場空間。そこで最初に観たのは、ジャン・コクトーの『双頭の鷲』。人間の本能、愛の営みが感情として包み隠さずに描かれていることに、そして薄暗い舞台で時折見えた感情の燃え上がる炎、憎しみさえも美しいと感じたことに衝撃を受けました。
 今回のトークでも話題に上ったリアリズム、それを観客の目線で語ると、彼の描く作品には「嘘が無い」ということです。観客は言わば目撃者ではないかとさえ感じて、高揚感を覚えたものでした。
 結果的に登場人物の感情に突き動かされて、私自身に化学反応のような気持ちの変化がもたらされました。それは作品に寄り添えた(わかるという)満足感でもあったように思います。以来、ベニサン・ピット(=TPT)に行けば何かが自分に起きるという期待を持ち、楽しみにしていたことが思い出されます。
 昨年、彼の演出したミュージカル『ルドルフ・ザ・ラストキス』で、「生きる」ことにつきまとう感情の全てが観る者を突き動かすことを体感された方も多いと思います。近いうちに今度はもっと間近でそんな体験ができれば。想いを強く願います。

(東京芸術劇場シンフォニースペースにて)

過去にも1000文字エッセイに、彼の作品について書いています。(1000文字エッセイ「タブーへの挑戦」

☆聴き手の長谷部浩氏がデヴィッド・ルヴォーについて書いた著書
傷ついた性―デヴィッド・ルヴォー 演出の技法傷ついた性―デヴィッド・ルヴォー 演出の技法
(1997/11)
長谷部 浩



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テーマ:観劇 - ジャンル:学問・文化・芸術

1000文字エッセイ「タブーへの挑戦」
1998年当時書いた観劇記が見つかったので、1000文字エッセイとして編集してみました。
1998年にTPTで再演された『テレーズ・ラカン』について。
演出はデヴィッド・ルヴォー
当時どう感じていたのか、ミュージカル『ルドルフ ザ・ラスト・キス』をはじめ、彼の演出作品の観劇記録として書き記します。
以下、前説からはじめます。
(注:1998年当時に書いた文章の表記です)
1998年。
今、最も日本の観客に受け入れられている外国人演出家は誰かと聞かれたら、私はデヴィッド・ルヴォーの名をあげる。
1957年生まれのイギリス人で、日本で演出する以前にアメリカのブロードウェイでも成功を収めている。
その彼が、日本人のプロデューサーと二人のユニットで、東京のベニサン・ピットを本拠地とする「シアター・プロジェクト・東京(TPT)を1993年に立ち上げた。
芸術監督としてだけではなく、年に数本の演出を行い、今年で5周年目を迎えた。

そこでの第一作目がエミール・ゾラ原作の『テレーズ・ラカン』。
主な配役は、タイトルロールのテレーズに藤真理子、テレーズの夫カミーユの友人であり彼女の不倫相手でもあったローランに堤真一、カミーユの母に佐藤オリエ。初演当時は俳優の名前で観客を動員するという程ではなかったと思う。しかしながら、観客は当時日本であまり知られていなかったイギリス人演出家による作品を評価し、注目し続けた。
そして『テレーズ・ラカン』は再演となった。
1994年の『双頭の鷲』からデヴィッド・ルヴォーの演出作品を見続けてきた私でさえ、初めはそのストレートな演出表現に驚かされた。

1000文字エッセイのタイトルは、 
「タブーへの挑戦」 (注:1998年当時に書いた文章の表記です)

 TPT5周年記念公演と銘打って、創立第一回目に上演された作品の再演である。『テレーズ・ラカン』は、この年の“WOMAN”(女性に焦点を当てた作品)というテーマの上演第一作目でもあった。
 19世紀のフランス人作家エミール・ゾラの作品。テレーズ(若村真由美)は、夫カミーユ(今井朋彦)の友人ローラン(堤真一)と一緒になりたいが為に、二人でカミーユを事故に見せかけて殺害。その後に同居していたカミーユの母(佐藤オリエ)の願いでローランとの結婚にこじつける。しかしカミーユの影から二人とも逃れることが出来ず、ついにはカミーユの母に殺害がばれてしまうが、ショックで彼女の体は硬直。体が回復しかけた時、カミーユの幻影におびえ疲れた二人は、彼女の目前で静かに自殺を図ったのだった。
 ここで描かれていたのは、女性の愛と精神的な強さ、それと常に背中合わせの孤独だった。テレーズは病弱な夫と対照的な快活で激しい感情を持つローランと、姑と夫と暮らす家で毎晩のように隠れて愛し合うという大胆さだ。「嫁であり妻であり」を演じていたテレーズが次第に夫を憎んでいく様を、ルヴォーはその愛情表現で見せた。寝室の窓から侵入してくるローランをテレーズは引き寄せ、口づけをして、いつ見つかるとも知れない短い時間の中で床に転がりながら、テーブルにもたれかかりながら、激しく衣服を剥ぎ取りながら愛し合っていく。閉塞感のある舞台と客席が一体となった劇場で観客は彼らの行為を目撃し、胸の内を探った。
 カミーユ亡き後に迎える新婚初夜の準備で、テレーズは一糸まとわぬ姿から純白の夜着を身に着けていく。それは日常着をつけたままでのローランとの隠れた行為から、晴れて正々堂々と一緒に夜を迎えられる転換の象徴だった。
 堤は再演にあたり「今までTPTを観てきた人はそんなに衝撃を受けないと思う」と語っていたが、初演を目の当たりにした観客の衝撃とはどんなものだったのか。しかしルヴォーは再演という形で支持を得ていた。必然性があれば、‘愛の行為’も‘裸’も、メッセージとして伝えることが可能なのだ。
 ルヴォー演出の作品には、愛に対して貪欲な女性が登場する。それでいてどの作品でも彼女たちの行為は私たちを惹きつける。そこには性を公にすることへの罪悪感ではなく、共感が常に存在していた。
(1998年観劇)

1000文字エッセイ「プリンスからプリンシパルへ」
6日に東宝ミュージカル『モーツァルト!』再演の幕が開きました。
モーツァルトに扮するのは、右の写真が初演から務めている井上芳雄さん、左が今回初参加の山崎育三郎さんです。
初日は今年デビュー10周年を迎えた井上芳雄さんの日でした。 

話は変わりますが、1000文字エッセイを書いています。
原稿用紙にすると、2枚と10行に収まる程度で。
今回は、一観客の目線でその成長を見てきた井上芳雄さんについて書いてみました。

タイトルは、
「プリンスからプリンシパルへ」

 「ルドルフが良いらしい」ミュージカル『エリザベート』を観劇した友人の間で噂になった日から、もう10年。初代ルドルフを演じたのは、藝大在学中の学生だった井上芳雄である。今や押しも押されもせぬミュージカル界のスターとなり、長身で細身の可憐な風貌から‘プリンス’と称されている。
 当時のミュージカル界では、有名なポピュラー歌手や既にスターとなった俳優が主演を務めることが常であり、若くしてクラシックの経歴を持つ無名の俳優の登用は珍しかった。実力で注目された彼は、デビューから2年後には、音楽の神童とも異端児とも言われたモーツァルトの生涯を描いたミュージカル『モーツァルト!』、初演のタイトルロールに抜擢されていた。初日の観劇者として、瑞々しく新鮮な衝撃を受けたことが忘れられない。
 さらに躍進は続く。翌年の2003年には蜷川幸雄演出の『ハムレット』に、レアティーズとして出演を果たした。
 経歴だけを見れば、順風満帆な歩みに見える。ところが、ストレート・プレイの『ハムレット』では、演技で定評のある藤原竜也のハムレットを相手に得意の歌声を封じられ、舞台という土俵の上で少々心細そうに映った。
 数々のミュージカルの主役、そしてリーディングなど様々な経験を積んだ彼が、時を経て、ついに観客を唸らせた。2009年、井上ひさしの最後の戯曲となった『組曲虐殺』で、彼は主人公の小林多喜二を演じきった。
 音楽劇であるが、本質的には演技中心の作品である。警察による拷問で死に至った小林多喜二。虐げられた人々の代弁をし、体を張り、命をかけて主張を続けた芯の強さを見事に表した。カーテンコールでは観客だけでなく、舞台の上の出演者も涙を流して感動を分かちあうほどに素晴らしい出来だった。
 そしてデビュー10周年の今年9月、記念コンサートが行われた。彼の代表作が歌で綴られ、その歌に込められた想いが伝わる。井上芳雄は言葉で作品を伝えられるほどの表現者として成長していた。バレエで言うところ同様に、彼にしかできない唯一の最上級の演じ手、という意味の‘プリンシパル’が相応しいエンターテイナーなったのだ。
 さて、この11月にミュージカル『モーツァルト!』4度目の幕が開いた。新鮮さから成熟味のある役柄と作品へと、期待が高まっている。



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