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kangekinocafe

Author:kangekinocafe
観劇の記録と紹介です。

えびす組劇場見聞録メンバーです。
しばらくblogはお休みしていましたが、【演劇、観劇のカフェ】blogからこちらに引っ越して来ました。
どうぞよろしく。

観劇のカフェ
出会った作品について語ります。関連書籍や音楽も、できる限りご紹介します。
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追悼―中川安奈さん
訃報に接し、驚きました。

今春、都内の劇場でお見かけした際には、いつもと変わらぬ美しい顔立ちで凛々しく歩いていらしたからです。その劇場では、ご主人の栗山民也氏の演出作品が上演されていました。

中川安奈さんには、一度だけお話させていただいたことがあります。
tptで上演された『皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと』初日乾杯の場でした。
出演者お一人お一人と歓談した時のことです。

中川安奈さんに記念のサインをいただこうとプログラムを差し出したところ、「演出家にサインをもらってあげましょうか?」と即座に観客を気遣っておっしゃってくださいました。
私が『バタフライはフリー』の頃から彼女の舞台を観ていること、tptの『チェンジリング』や『アダムとイブ』も、もちろん観ているので、中川さんと話ができて嬉しいのだと伝えたところ、ふっと打ち解けたように満面の笑顔で応じてくださり、熱っぽく芝居の話を観客の輝く表情に例えながら語ってくださいました。このことは忘れられない思い出としていつも胸にありました。

もっとたくさん出演作品を観ていますが、いつも役に全力で向き合って舞台に凛として立っている、それが私の抱いている中川安奈さんの印象です。
最近では、演出家としてもお名前を見ることがありました。
今度は演出作品を観てみたい…それはついに叶いませんでした。

映像とは違って舞台で見る俳優の姿は、その時に抱いた感情とともに観客の胸にいつまでも残っています。
はつらつとした彼女の笑顔を胸に、旅立ちを見送ろうと思います。

※tpt『皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと』観劇録はこちら




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ONDOK『サド公爵夫人』
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新国立『マニラ瑞穂記』(4/3-20)
マニラ瑞穂記ポスター昨年、新国立劇場で上演された『長い墓標の列』。
(観劇録はこちら
それはベテラン俳優たちとともに多くの新国立劇場演劇研究所修了生たちが出演するという企画でした。
企画の意図以上に、作品として濃厚でエネルギッシュな舞台を見せてくれました。

さて、その第2弾は、作・秋元松代の戯曲『マニラ瑞穂記』。
演出は、新国立劇場演劇研修所所長として、研修生を育て、成長を見守ってきた栗山民也です。

戯曲を読んで初日観劇に臨みました。
1933年(明治31年)、フィリピンのマニラを舞台に繰り広げられてきた世界各国の国盗り争い。
いつの時代になっても私たち人間のやることは同じだと、現在の世相にリンクする視野の大きな物語と思いきや、その場所で生きる人々の生きざま、個々の信念、ひいては日本人の魂にも言及するような身近に感じられる作品でした。
時代背景なりの男たちの信念、その環境に身を置く女たちの生きるための覚悟などが、赤裸々に描かれています。
特に、混乱の時代に異国の地で、信念で自らを覆うようにして正気を保っている若者たちの姿には心を打たれました。
親兄弟と別れて、今この異国にいる彼ら。
何と戦い、誰が救われるのか、その答えは自ら作り、信じることしかないのです。

さて、ここからは少々ネタバレします。------------
戯曲を読んだ時と少し異なる印象を受けたのが、海軍中尉の「古賀」像です。(古賀を演じるのは昨年の『長い墓標の列』に引き続いて出演する演劇研修所第1期修了生の古河耕史
第一幕前半に、秋岡伝次郎(千葉哲也)が老婆のシズの容姿と存在に恐れを抱く場面があります。
口の利けないシズと名付けられた女性が日本人らしいというのを確かめるのに、日章旗を見せると君が代を歌うと聞いて、古賀が日章旗を指し示し、シズに向かって君が代を唄えと促すのです。
それを制止する秋岡。
この秋岡は、女衒(ぜげん)と言われる女性を売って働かせることを生業としている男です。
それを知った上で古賀は、お前の売った女の末路かもしれないと秋岡に言い放ちます。
戯曲を読んでいる時には、なんてやることのいやらしい心の痛みのわからない男だと古賀のことを決め込んでいました。
しかし舞台での展開を観ていると、秋岡の人身売買という商売を戒めるような物言いに、古賀の真っ直ぐで純粋な人間性が見えてきました。

二幕で古賀が秋岡に対してある企てをしますが、その際に彼が訴える言葉に嘘はないのだと、異国の地で日本人として日本人でいられる生き方を模索してもがいている彼の性根が切なく思えてきました。
海軍中尉として汚れのない純白の制服に身を包む彼の心もまた純白であったのだと。すべてはその心を守るためのスタイルであったのかと。

秋岡と古賀の信念の対峙は、最初のあの場面からはじまっていたのだと思えました。
そして結末へ。

秋岡を理解する日本領事の高崎(山西惇)。
秋岡と高崎、彼らは役の上でも俳優としても、ただならぬ大きな気配を漂わせています。それも見どころの一つ。

ベテランとの共演と言っても、既に経験を積んだ研修所修了生がその役割を担いつつあります。
今後はどんな作品を見せてくれるのでしょうか。
劇場へ足を運ぶ楽しみが増えたように思います。

マニラ瑞穂記舞台美術。小劇場のロビーに展示されている舞台美術模型。
客席が四方から舞台を囲んでいます。
美術・伊藤雅子

作・秋元松代、演出・栗山民也、
美術・伊藤雅子、照明・田中弘子、音響・吉沢 真、衣裳・中村洋一

※公演詳細は新国立劇場の公式サイトで。

(新国立劇場 小劇場にて)

※新国立劇場 演劇研修所についてはこちら

※新国立劇場のサイトでは、こちらの修了生情報で、修了生の活動を知ることができます。


☆『マニラ瑞穂記』を収録。
マニラ瑞穂記・常陸坊海尊 (1964年)マニラ瑞穂記・常陸坊海尊 (1964年)
(1964)
秋元 松代



『ピグマリオン』(11/13-12/1)
201311ピグマリオン映画『マイ・フェア・レディ』の元になる戯曲です。
映画は驚くほど戯曲に忠実だったことを実感しました。ただしラストシーンを除いては。
そして女性の描かれ方の、なんと繊細なことでしょう。
イライザの成長が軸となっているのは周知のこと。
実は男たちがイライザに翻弄されている、そんな彼らの様が喜劇でもあります。

男性陣に対して、使用人のミセス・ピアス(増子倭文江)をはじめとして、ヒギンズの母・ミセス・ヒギンズ(倉野章子)、そしてイライザ(石原さとみ)の現実的なこと。
冒頭ではそれらの現実的な物言いが鬱陶しく感じられることもありましたが、イライザがレディとしての振る舞いを身に付けていくにつれ、彼女たちの意志の強さに魅了されるようになりました。
なぜイライザは、ヘンリー・ヒギンズ(平岳大)の罵倒に耐えて、貴婦人の言葉遣いを身に付けることができたのでしょうか。
幼くして自立しなければならなかった彼女は、女だからと身を売ることもせず、真っ当に花を売ることで生計をたてることを自負し、毅然とした志を持って生きてきました。彼女なりに。
そんな彼女に芽生えた向上心。
ヘンリー・ヒギンズの、高級なデパートの売り子として働ける言葉遣いを自分なら教えられる、という言葉を頼りにやって来たイライザ。
(相場は別として)ちゃんと月謝を払うつもりの、なんとも気高い彼女なのです。
思い出すだけでも目頭が熱くなってきました。

イライザをどういう待遇で屋敷に置くのか、きっちり確認するミセス・ピアス。
そして、イライザの貴婦人ぶりに賭けに勝った喜びようのヘンリー・ヒギンズとピカリング大佐(綱島郷太郎)。
そんな彼らにピシャリとイライザの将来について問い、浮かれる行為をたしなめるミセス・ヒギンズ。
さらにミセス・ヒギンズの素晴らしいところは、今や大金持ちとなったイライザの父親(小堺一機)の結婚式に参列しようとするところ。
彼女が参列することにより、イライザの父親の世間での立ち位置が立証されるという思慮深い想いやりと貴婦人としての責務を果たす姿。

若い石原さとみが演じるイライザを、周囲の女性陣が温かい眼差しで支えている、そんな作品に見えました。

いち早くイライザに恋をしたフレディ(橋本 淳)ですが、残念ながら母親(春風ひとみ)と妹と比べると頼り無く感じられます。

「辛辣」と称されるバーナード・ショー、イライザと周囲の人々のあるべき姿が描かれています。
ヘンリー・ヒギンズたちを叱責するミセス・ヒギンズの言葉にハッとしたことでしょう。

作・ジョージ・バーナード・ショー、翻訳・小田島恒志、演出・宮田慶子
美術・松井るみ、照明・沢田祐二、音楽・かみむら周平、音響・高橋 巖、衣裳・半田悦子、
ヘアメイク・川端富生、振付・青木美保、演出助手・高野 玲、舞台監督・澁谷壽久

※詳細は新国立劇場の公式サイトで。

(新国立劇場 中劇場にて)

☆『ピグマリオン』翻訳は今回上演と同じ小田島 恒志。
【「後日譚」(登場人物たちのその後を描いたもの)も完全収録した決定訳!(光文社の書籍紹介より)】
ピグマリオン (光文社古典新訳文庫)ピグマリオン (光文社古典新訳文庫)
(2013/11/08)
George Bernard Shaw、 他



☆ミュージカル映画『マイ・フェア・レディ』DVD
マイ・フェア・レディ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]マイ・フェア・レディ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
(2013/08/23)
オードリー・ヘプバーン、レックス・ハリソン 他



てがみ座『地を渡る舟』(11/20-24)
てがみ座地を渡る舟演劇ユニットてがみ座、第9回公演。
脚本の長田育恵。
彼女の作品を今年に入ってから観たのは、
◆ミュージカル「by the sea~波のかなたへウラの歌~」(脚本・作詞)
 劇団:演劇ユニット てがみ座×イッツフォーリーズ、演出:坂口阿紀
◆「凪の樹海」(脚本)
 演出:藤原新平(文学座)
その他にも
◆「祝女 シーズン3」(NHK)などの仕事をされていることから、実に多彩で多才な人物だとお見受けしました。

そして彼女が主宰するてがみ座公演は、今回が初見です。

さて、てがみ座の『地を渡る舟』(公式サイトはこちら)、主人公は実在した旅する民俗学者の宮本常一。
日本列島を隈なく歩いた学者としての彼の信念は、戦前、戦中、戦後を通して職務以上に人々に影響を与えました。
この作品では、実業家・銀行家として知られた渋沢敬三が東京の自宅の物置小屋に作った「アチックミューゼアム」が舞台となっています。
そこに集う志のある研究者たち、そしてそこには渋沢のもう一つの顔がありました。
渋沢が瀬戸内で教師をする宮本を招聘したことから、宮本の人生ばかりでなくそこに集う彼らの意志が大きく動き出しました。
戦争に翻弄されながらも、尊い志の下、ミューゼアムは守られていきます。
そして迎えた終戦の時。
日銀の副総裁にまでなった渋沢にとって、ミューゼアムは彼の生きる道そのものであることを痛感しました。

渋沢敬三(青山 勝)の想いを足で実践してきた宮本常一(古河耕史)。
彼らの志を「文字による方舟」になぞらえ、その陰にあるそれぞれの妻たちの大きな決心と想い。
脚本の長田育恵は、そこのところもしっかりと描いています。
彼女たちの守るべき家と子ども。
そんな大きな犠牲を払ってでも遂げる志であること、アチックミューゼアムに並ぶ資料の一つ一つが語るものについて考えずにはいられませんでした。

さて、この作品中、真っ直ぐに生きる宮本常一を演じる古河耕史。
役の内面を観客に伝える力のある俳優です。

演出・扇田 拓也、脚本・長田 育恵
舞台美術・杉山 至+鴉屋、音響・笠木健司、照明・シバタユキエ・木藤 歩、衣裳・阿部 美千代

渋沢敬三没後50年企画展 8/25-11/24(案内が劇場の折込チラシに入っています)
渋沢敬三記念事業「屋根裏部屋の博物館」9/19-12/3(案内が劇場の折込チラシに入っています)

(東京芸術劇場 シアターウエストにて)




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